最初に握手するところ
楽器が塗装に入り、空っぽになった机の上で
なにやら黄色い木くずが・・・
そうです!
答えは楽器ケースの取っ手を作っているのでした。
今回はハゼの木を使っています。
ハゼの木で有名なのは木蝋(モクロウ)が取れること。
燃やしても煙のでない和ろうそくの原料になったり、
お相撲さんの鬢付け油の原料になったりします。(化学製品のヘアワックスでは髪型をキープできないそうです)
木部にもワックス分がありなめらかで丈夫な材です。
その丈夫さとしなりを利用して
和弓は竹でハゼの木を挟み込むようにして作られています。
大伴家持の和歌のなかにも『天のはじ弓』(天から授かった神聖なハゼの弓)
という言葉が出てきます。
弓と矢を持ち神代に天皇の伴をしていたのが大伴一族で、
その名を汚したり一族を絶やしてはいけないという歌です。
古来弓は敵を射る武器としてよりも、
弓から出る音に力が宿り、場を清めることができるとされてきました。
ケルトの神話の中にも竪琴の音で眠らせることで戦いを止めた話がでてきます。
音には不思議な力が宿っているのです。
小刀で削り、形を整え・・・
磨きをかけて完成です。
ハゼの木のワックス分でつやつやに仕上がりました。
ケースは楽器の帰る大切なお家。
温度や湿度、衝撃から楽器を守ってくれます。
お気に入りのシルクの布で赤ちゃんを包むように楽器を包み、
ケースに入れることをお勧めしています。
特に暑い夏場は高温になる車の中にケースを置かずに室内に移動させる、
陰の涼しいところに駐車することをご注意下さい。
建築のデザインも、ドアの取っ手のデザインから
家一軒の全ての設計が始まるそうです。
ケースの取っ手もある意味楽器よりも先に
奏者の方と出会い握手する大切な場所なのです。
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